2021年9月21日[火]発行
1|東浩紀 観光客の哲学の余白に 第26回 訂正可能性と反証可能性
東が『ゲンロン12』の論文で参照した哲学者カール・ポパー。その論文には収められなかった、ポパーの「反証可能性」と東の「訂正可能性の哲学」の類似とは。人文知と科学の分断を越え、両者の緊張関係のなかで思考する道を探ります。
2|柳美里 【特別掲載】第六十五回岸田國士戯曲賞に寄せて
第65回をもって岸田戯曲賞選考委員を辞任した柳美里さん。未発表の選評の全文を、辞任の経緯とともにゲンロンβに掲載します。「受賞作無し」という結果への反応を受け、戯曲に期待される「言葉」のあり方を綴ります。
3|山森みか イスラエルの日常、ときどき非日常 第2回 共通体験としての兵役(1)
『ゲンロン12』から始まった新連載の第2回。イスラエルにとって記念すべき回となった東京2020を取り上げ、「イスラエル人」の同胞意識を考えます。選手への市民の共感の濃淡に、国民皆兵制度が影響していた?
4|本田晃子 革命と住宅 第6回 第3章 スターリン住宅──新しい階級の出現とエリートのための家
1930年代のソ連には、過剰競争や労働のジェンダー化を経たことで、エリート向けの豪奢な集合住宅「スターリンの家」が建築されました。その建築を扱った映画をもとに、「家の否定」という革命のポリシーが変化を被る様を読み解きます。
5|堀江広行 つながりロシア 第18回 セルゲイ・ブルガーコフと西田幾多郎──歴史の意味へ
ロシアのブルガーコフと日本の西田。同時代に生きながら知り合わなかったふたりには、哲学上の共通点があると筆者は指摘します。一元論的な世界から他者としての絶対者へ――大戦期に没した両者の思想から「歴史」を考えます。
6|入江哲朗 わけのわからないテクストを読む 思想史と謙虚さ
思想史を形作るテクストは「わけがわからない」ものがほとんどである?『アメリカを作った思想』を訳出した筆者が、思想史研究の効用を語ります。テクストの権威の構造を括弧にいれる、「認識的謙虚さ」とはなにか。
7|小松理虔 当事者から共事者へ 第13回 共事者の居場所
前回の連載やシラス配信で、自身の悩みを発露した小松さん。その経験は図らずも、ケアの体験と近かったと語ります。「イノセンス」、「オープンダイアローグ」、「環状島」を鍵に、対話により共事者を拓く可能性を模索します。