ゲンロンβ79|編集長=東浩紀

2022年12月23日[金]発行

  • 1|小松理虔 当事者から共事者へ 第20回 共に歩き、友になる──沖縄取材記(前篇) #37
    今年8月、沖縄で平和学習事業を手がける会社を立ちあげた知人を頼り、家族3人で沖縄取材に出掛けた小松さん。トーチカや普天間飛行場、基地跡地の巨大なショッピングセンター……現地の青年ガイドが語ったのは、本土とはまるでちがう沖縄の「戦後」のすがたでした。
  • 2|松山洋平 イスラームななめ読み 第10回 これからのクルアーン翻訳、あるいはアダプテーション #37
    意味の正確さか、リズムか。イスラム教の聖典クルアーンの日本語訳をめぐる、さまざまな工夫と苦労が取りあげられます。いっぽう、アラビア語以外に翻訳されたクルアーンは、じつはクルアーンとは言えないのだと松山さんは指摘します。人間ではない「神の言葉」を翻訳することはいかにして可能なのでしょうか。
  • 3|河野至恩 記憶とバーチャルのベルリン 第7回 二〇二二年のベルリンと鷗外(後篇) #37
    森鴎外の没後100年記念行事で講演するため、ベルリンへ向かった河野さん。そこで対談を聞いた、詩人の伊藤比呂美さんの圧倒的な鷗外の読み方。また河野さんの講演では、他言語で考える人としての鷗外に光が当てられます。
  • 4|藍銅ツバメ SFつながり 第7回 異類婚姻とゲームと犬 #37
    デビュー作『鯉姫婚姻譚』の源流をたどるエッセイ。藍銅さんはなぜ人間と人間以外の種族が結ばれる物語に惹かれるのか。ドラクエやポケモンなど、幼少期にのめり込んできたゲームを振りかえっていきます。藍銅さんの愛犬のネーミングにも注目です。
  • 5|加藤めぐみ(ゲンロン編集部) 人間的な等価交換の復権へ 安達真×桂大介×東浩紀「シラスはウェブのなにをやりなおすのか」イベントレポート #37
    話題沸騰のシラス2周年イベントがレポートに。Web1.0からWeb3へ。ウェブの歴史と不可分に結びついている「フリー(無料)とフリー(自由)の思想」をたどっていくことで、あり得たはずの別のインターネットのかたちに焦点を当てます。

表紙写真:メカラウロコ『鮭女房 -結- ver.2』(2022年、映像、12分)より。メカラウロコはゲンロン新芸術校第6期金賞受賞者。「鮭」を通じて、フェミニズムや女性の問題を思考してきた。本作では、山形や新潟に伝わっていた異種婚姻譚「鮭女房」を、現代の視点から再解釈する。鮭が人間の女に化けて、男の元へ行く。自分の体内からいくらを取り出して作ったはらこ汁を食べさせ、その美味しさで男を虜にして結婚する。しかし、のちに正体を知られ、男の元を去る。これが「鮭女房」のあらすじである。メカラの作品では、食べられたい=愛されたいという鮭の願望、夫婦の現代的な役割分担、そして子どもを産むことへの戸惑いと、作家自身の等身大の問題が物語に組み込まれる。現代の風景と昔話の絶妙に組み合わせられた魅力的なCG映像のなか、イノセントな鮭とともにじわじわと問題を考えさせるユーモラスな作品である。同作は新芸術校金賞受賞者展『鮭らは海から川へ -フェミニズムの波を漂う-』で発表された。映像は作家のホームページで公開中(URL= <a href="https://mekarauroko.site/46ece9d68f5f454bb57cc749c8d54ab9" rel="noopener" target="_blank">https://mekarauroko.site/46ece9d68f5f454bb57cc749c8d54ab9</a>)。(上田洋子)

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