『新プロパガンダ論』関連選書&推薦コメント|西田亮介

ゲンロンα 2021年4月9日配信
 2021年1月に刊行され、YouTubeで無料公開中の刊行記念イベントも話題沸騰のゲンロン叢書008『新プロパガンダ論』。各書店で、著者ふたりの主要書籍(編集部が選出)+著者おすすめの書籍を集めた刊行記念フェアを開催していただきました。
「ゲンロンα」ではその選書リストを特別に公開。また著書ふたりに選書への推薦コメントを寄せていただきました。以下にお届けするのは西田亮介さんによる選書&コメントです。現代におけるメディアエコシステムの基本を押さえる選書に、辻田さんの選書との違いも楽しんでほしいというコメントをいただきました。ぜひあわせてお読みください。
 これらの書籍はゲンロンカフェに配架している「ゲンロンカフェ選書」にも追加予定です。ほかの選書者によるリストはこちらからご覧いただけます。

■ 西田亮介

No.書籍名著者出版社
1操作される現実
──VR・合成音声・ディープフェイクが生む虚構のプロパガンダ
サミュエル・ウーリー(小林啓倫訳)白揚社
2AIと憲法山本龍彦編著日本経済新聞出版
3情報法概説 第2版 曽我部真裕、林秀弥、栗田昌裕弘文堂
4マインドハッキング──あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディアクリストファー・ワイリー(牧野洋訳)新潮社
5告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダルブリタニー・カイザー(染田屋茂、道本美穂、小谷力、小金輝彦訳)ハーパーコリンズ・ジャパン
6#リパブリック──インターネットは民主主義になにをもたらすのかキャス・サンスティーン(伊達尚美訳)勁草書房
7ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容西田亮介東洋経済新報社
8マーケティング化する民主主義西田亮介イースト・プレス
9不寛容の本質 なぜ若者を理解できないのか、なぜ年長者を許せないのか西田亮介経済界
10なぜ政治はわかりにくいのか──社会と民主主義をとらえなおす西田亮介春秋社
11民主主義 〈一九四八‐五三〉中学・高校社会科教科書エッセンス復刻版文部省著、西田亮介編幻冬舎
12「言葉」で読み解く平成政治史西田亮介千倉書房
13無業社会 働くことができない若者たちの未来工藤啓、西田亮介朝日新聞出版
14新・大学でなにを学ぶか上田紀行編著岩波書店

【西田亮介による選書コメント】

『新プロパガンダ論』は政治と情報を巡る現在進行系の出来事を筆者と辻田真佐憲氏で論じた書籍だ。見立てや認識が共通する部分もあれば異なる部分もある。というより、意見の相違は随所で見られるはずだ。

 筆者の専門はメディアと政治の関係を中心とした社会学、他方の辻田氏は近現代史専門という背景の違いもある。

 だからこそ、同世代(関西出身、出身大学も同じ)男性と一見似た我々二人の選書も大きく異なったものになっているはずだ(たぶん)。

『新プロパガンダ論』での差異を、選書の違いとあわせて読み解くことで、読者諸氏ならではのメディア観、政治観を培ってほしい。
 

 筆者は、「今、何が行われているか」を知ることから、規制の必要性の有無や範囲、手法が検討されるべきだと考えている。比較的新しい介入や発信手法(Computational Propaganda)について知るという意味で『操作される現実』はおすすめしたい。

 また2016年の米大統領選挙やBrexitに深く関わったとされるPR企業ケンブリッジ・アナリティカ社の社員たちが告発本を出し、近年、邦訳も進んでいる。『告発』『マインドハッキング』を読むことで、彼らの動機や組織内でのガバナンスなどを垣間見ることができる。ケンブリッジ・アナリティカ社自体は解散したが、人や手法は世界各地に散らばっている。機があれば、新しい技術やサービスと結びついて、再び同じ分野で台頭する可能性は否定できない。直近で何が、どのように行われ、どのような影響を持ったかを理解し、把握することが重要だ。

 規制を中心とした対策の検討も法学中心に進んでいる。サンスティーンは米憲法学のスター研究者で、関連分野で多くの業績を残している。最新邦訳の一つが『#リパブリック』だ。古くはウェブサイトの時代からブログ、そして現在のソーシャルメディアの時代に至るまで、サンスティーンは多角的に技術、サービス(の自由)と公共性を両立させる制度を検討してきた。本書は2001年に “Republic.com” として出版され、2007年に “Republic.com 2.0”、そして2017 年に本書 “#Republic” として、それぞれの時代ごとにアップデートされてきた一冊だ(刊行年はいずれも原著のもの)。いまサンスティーンが何を語るのか。一読に値する。

 日本の現状と対策はどうか。AI・ソーシャルメディア時代の情報技術の発展を総合的かつ本格的な憲法問題として論じて話題となったのが、『AIと憲法』だ。情報発信の問題に限らず、法学、社会科学的視点からどのように新技術とそれに付随する問題を論じられるかを俯瞰するためにも重要な一冊だ。現在の日本の情報法の定評ある教科書の最新版が『情報法概説 第2版』だ。憲法、競争法など多様な法的視点を学ぶことができる。
 

 複雑化した現代社会において、多くの生活者は、政治、経済、社会の諸問題を考えるにあたって、何らかのメディアを通して間接的にそれらの存在を知り、判断、行動することになる。換言すれば、メディアとそれを取り巻くエコシステムが関係しない問題はほとんどないと言ってもよい。そのメガネとなるメディアについて、ステロタイプな認識から離れて実態に目を向けることが、政治、経済、社会の諸問題を正しく解決する第一歩につながるはずだ。

『新プロパガンダ論』は入り口だ。正解が語られるわけでもない。筆者もこれまで日本の政治行政とメディアの関係や諸問題を実証的に検討してきた。選書に加えて、それらの拙著も参考になるかもしれない。ぜひ古くて、新しいメディアと政治の問題を自分の頭で考えてみてほしい。

 
政治の戦場はいまや噓と宣伝のなかにある

ゲンロン叢書|008
『新プロパガンダ論』
辻田真佐憲+西田亮介 著

¥1,800+税|四六判・並製|本体256頁|2021/1/28刊行

 

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1983年京都生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、『ネット選挙とデジタル・デモクラシー』(NHK出版)、『メディアと自民党』(角川新書)、工藤啓との共著『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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