SFつながり(4) 実録ゴッドガンレディオ VS サイファイア抗争史|高丘哲次
初出:2020年4月17日刊行『ゲンロンβ48』
1 はじめに
これから記すのは、ゲンロンSF創作講座内に形成された2グループ、ゴッドガンレディオ(以下、GGR)とサイファイア(Sci-Fire)との戦いの歴史である。といっても、前者の構成員はたった3名であり、両者を並べることに首をかしげる者もいようが。
ゲンロンβ読者の諸兄姉にとっては、あまり知りたいとも思えない、取るに足らない出来事であるに違いない。ただ、この事件は、私が小説家として世に出るきっかけとなったものであり、株式会社ゲンロンの徳久氏から「デビューするにあたってのきっかけや苦労」というテーマで執筆依頼を受けた以上、触れないわけにはいかなかった。
しばし、お付き合いいただけると幸いである。
2 サイファイア、それはゲンロンSF創作講座の影の支配者
ゲンロンβを購読されている皆様であれば、「ゲンロンSF創作講座」について耳にしたことがあるかもしれない。先ずは、この稿を進めるにあたって、SF創作講座の内容について詳らかにしておこう。
これは、大森望氏を主任講師とする、小説の創作スクールである。その内容は、小説の書き方を一から教えるわけではなく、いきなり実戦から始まる。毎月開かれる講座では、第一線で活躍する小説家が招かれ、受講生が創作した梗概(あらすじ)・小説に対して講評が行われる。
さらに、SF創作講座の最も大きな特徴は、受講生同士のバトルロワイヤルの側面を持つということである。
講座は大きく分けて、2パートから構成される。
前半は梗概バトルである。受講生は毎回与えられたテーマをもとに梗概を創作し、講師がその中から優秀作品を3つ選出する。梗概が選出された受講者は、次回の講義に実作(完成版の短編小説)を提出する権利を得る。
後半は実作講評である。前回の講義で梗概が選出された受講者が短編小説を提出し、それに対し講師陣が評価して点数を与える。受講者が獲得した点数の合計は、即座にゲンロンのウェブサイトにて公表される。
受講生の序列は、常に可視化されているのだ。SF創作講座の期間中、受講生は絶え間ない小説バトルに身を置いているとも言える。
この過酷ともいえるシステムは、筆力上昇に直結していることは間違いない。事実として、講座を通じて商業デビューを果たす者が相次いでいる。名前を挙げれば(以下、文中全て敬称略。ご了承ください)、メフィスト賞を獲得した名倉編、講談社から単著を刊行した櫻木みわ、創元SF短編賞を受賞した八島游舷、アマサワトキオ等々。
さて、本題である。
いま並べた名前に注目していただきたい。彼らには、ひとつの共通点がある。
ゲンロンSF創作講座で最も活躍した彼らは、全員が『Sci-Fire』(サイファイア)という同人誌に寄稿しているのである。
これこそが、サイファイアグループである。
サイファイアとは、SF創作講座1期生である高橋文樹が中心となって形勢されたグループである。高橋は、講座全期を通じて最高の筆力を有していると評されることもあり、SF創作講座の王――フミキング、と呼ばれている。
彼らの機関誌である『Sci-Fire』は、同人誌とはいえ業界関係者からも注目が高く、新人SF小説家の登竜門とも呼ばれているとか、いないとか。SF創作講座の受講生にとって成功の分かれ目は、サイファイアグループに迎え入れられるか否かと言っても過言ではない。
また、サイファイアは「ダールグレンラジオ」なるウェブラジオを運営している。サイファイア幹部たちが現役受講生の作品を読み、アドバイスを与えるという内容である。プロ・セミプロである彼らからのアドバイスは、的確であることは認めねばなるまい。
サイファイア幹部から目をかけられた数人の受講生は、ダールグレンラジオを通じたアドバイスによって、めきめきと筆力を上げてゆく。そして小説バトルの勝者となり、ゆくゆくはサイファイアに名を連ねることになるのだ。
公平に見れば、サイファイア閥の存在は講座全体のレベルを引き上げることに貢献しているとも言える。
だが、全ての受講生がその存在を快く思っていたわけではなかった。
3 高丘の敗北とGGRの誕生
SF創作講座もスクールである以上、そこにはスクールカーストが存在する。
私が2期受講生であった時点でも、サイファイアはすでに強力なメンバーを揃えた講座内サークルとして、権勢をふるっていた。
そのときの中心メンバーは、第1期の高橋をはじめ、高木刑、櫻木みわ。第2期からも、早くから頭角を現したアマサワトキオ、麦原遼らが入閣を果たしていた。
彼らサイファイア=ジョックスたちには――これは、スクールカースト下位にあった私のうがった見方かもしれないが――講師や編集者の接し方も違った。
例えば、講座によく顔を出していた名物編集者の小○氏(私の作家活動に支障がでないよう名前は伏せる)などは、サイファイアメンバーに対しては「トキオくん」「麦原ちゃん」と、親しげに呼ぶ。それ以外については、よそよそしく「さん」付けである。私などは、○浜氏から最後まで名前すら覚えられなかったというのに!
このように、スクールカースト下位のルーザーどもは、サイファイアグループのことを内心で疎ましく思っていたのである。たぶん。
だが、SF創作講座はあくまで実力がものをいう世界である。サイファイアのメンバーはクオリティーの高い小説を書いているからこそ、編集者たちから寵愛を受けているのであった。
受講生たちの間には、講座のなかばにしてもはや諦めの空気が漂っていた。
「どうせ勝つのは、サイファイアだからな……」
そんなことを、はばからず口にする者も少なくはなかった。実力・人気を兼ね備えたサイファイアメンバーに歯向かおうなど、愚か者のすることだとすら見做されていたのである。
だが、そんな愚か者たちがいた。
それがGGRである。
「評価点が低くても、最後に勝てば問題ない」
というのは、私が講座を通じて言い続けていたことである。
講師たちから与えられる評価点は、かならずしもSF創作講座の最終的な勝利を約束するものではない。獲得した評価点の上位3名に与えられるメリットは、「ゲンロンSF新人賞」の最終候補に自動的に選出されるということである。
ゲンロンSF新人賞を獲得することこそ、受講生にとっての最終目標なのであった。
講座の最終課題として開催されるこの新人賞へは、全員が作品を提出する権利を持っている。最終候補として残るのは5から7作品ほどである。そのうちの3作は、評価点の上位3名が自動的に選ばれるが、他の小説は純粋に面白かったものが選ばれる。
そのため私は、
「小説の創作スクールに通っているのだから、目先のポイントにとらわれずに筆力を高めることに集中するべきだ。最高の一作は、ゲンロンSF新人賞に提出すれば良い」
と、言い続けていたのであった。
受講中に私が心がけていたことは、とにかく自分のテクニックを強化することである。私は、この講座を受けるまでまともに小説を仕上げた経験がなく、とにかく技術を身につける必要があった。そのために、提出する小説に以下のルールを課していた。
1 なるべく人称を使い分ける(一人称・三人称・疑似三人称など)
2 同じ舞台を用いない(時代・場所を毎回異なったものにする)
3 毎回異なったジャンルを書く(SF・恋愛・ミステリ・ファンタジー・ホラーなど)
このようにして培ったテクニックを総動員すれば、ゲンロンSF新人賞を獲得できるはずだと計算していたのである。
結果から述べよう。
私は負けた。
ゲンロンSF新人賞の最終候補には残ることはできたが、最優秀を獲得したのはアマサワトキオ、そして次点は麦原遼であった。
つまり、サイファイアにワンツーフィニッシュを決められたのである。
第2期の全行程が終了し、打ち上げ会場の坐・和民でのこと。
圧倒的なサイファイアの力を見せつけられた他の受講生たちには、もはや悔しさの色はなかった。むしろ、彼らを称える声ばかりが辺りを占めていた。
「やっぱり、トキオさんの小説ってドライブ感がすごいよね」
「麦原さんの発想、やっぱり常人とは違うよなあ」
「サイファイア、万歳!」
そんな声を聞きながら、私は泣いていた。
悔しくてならなかった。サイファイアが書く折り目正しいSF小説に、それを手放しで評価する大人たちに、わけもなく怒りを覚えていた。感情を自分の裡に抑えこもうとすると、かわりに涙が溢れ出てきた。
私はやけになって、坐・和民の薄いビールを喉の奥に流し込んだ。
すると、他にも同じように目を赤くしながら、ビールジョッキを傾けている者がいることに気づいた。
ひとりは鵜川龍史(うかわりゅうじ)。
彼は、講座を通じて一度たりとも梗概が選出されなかった者である。それにも関わらず、毎回休むことなく(正確に言えば1回だけお尻の具合が悪く提出できなかった)小説を書き上げ、自主的に提出していた。不屈の闘志の持ち主である。
もうひとりは架旗透(かはたとおる)。
彼は、人類愛の男である。だがその愛情は一風変わったものであり、人体をアルコール発酵させて酒を醸造する話や、動けなくなった妹をイルカに変えて海で自由に泳がせる話など、その独特のヒューマニティーは誰にも理解されなかった。
私は、二人の表情を見て理解した。
サイファイアを倒そうとしていたのは、自分だけではなかったことを。鵜川、架旗も同時に気づいたのであろう。すぐさま私たちは集まり、ビールジョッキを激しくぶつけながら叫んだ。
「我ら3人、生まれし日、時は違えども、心を同じくして助け合い、サイファイアを誅することを誓わん」
このようにして結成されたのが、SF創作講座反主流派組織、GGRである。
だが結成して早々、私たちは困難に直面することになる。サイファイアを倒そうと誓ったものの、すでに自分たちが受けていた第2期は終了していたのだ。小説を書くことで、彼らと戦うことは出来ないのであった。
そこで、私たちは考えた。
サイファイアが「ダールグレンラジオ」を運営しているのであれば、自分たちもウェブラジオを通じて対抗すれば良い。私たちは、さっそく「ゴッドガンレディオ」というウェブラジオを立ち上げることにした。
こうして、GGRとサイファイアとの戦いの火蓋は切って落とされたのであった。
4 ウェブラジオ戦争
ゴッドガンレディオの内容は、ダールグレンラジオとほぼ同じで、SF創作講座3期生の小説を読み、その感想を動画としてアップするというものである。
ただ、ひとつだけ異なった――というより、正反対な点があった。
ダールグレンラジオは、提出された小説から特に優秀なものを選び、それにアドバイスを与えるという内容である。対してゴッドガンレディオは、梗概選出されていない自主提出作品だけを読み、それについて語るというものであった。
先に、講師から梗概を選ばれた者が、翌月に小説を提出する権利を得ると述べた。だが、それには例外もある。梗概を選ばれてもいないのに勝手に提出される、いわゆる「自主提出作品」という作品群があったのだ。
自主提出作品に対しては、講師は基本的に読む必要はなく、気が向けばコメントを与える程度で良かった(とはいえ、多忙にも関わらず自主提出作品を読んでくださる講師の先生も多く、主任講師の大森先生はほぼ毎回コメントをくださった)。梗概バトルのルーザーのなかには、読まれるかどうか分からないのに、自主的に小説を投稿する者たちがいたのである。
GGRのメンバーも、かつて自主提出の常連であった。
私たちは、自分たちと同じような諦めの悪い者たちに、継戦するための燃料を補給しようと考えたのである。いわば、評価を得ることが少ない破天荒な小説の書き手を焚き付け、お行儀の良いサイファイア的な書き手に対して、強烈なカウンターをお見舞いしようとしたのだ。
だが、さっそくカウンターを食らったのは私たちの方であった。サイファイアを倒すためにラジオを立ち上げたというのに、逆に彼らから先制攻撃を加えられたのである。
そのときのダールグレンラジオのパーソナリティーはサイファイアでも最強とも言える2人が受け持っていた(おそらく私たちを意識してのことであろう)。つまりは、サイファイアの王である高橋文樹と、第2期総代となったアマサワトキオである。
サイファイアの特攻隊長と呼ばれるアマサワは、いきなりツイッター上で私たちに向かってこう宣言したのだ。
「ゲンロン創作講座のウェブラジオは2種類ある。ダールグレンラジオか、ダールグレンラジオ以外か……」
アマサワは現在ツイッター休止中のため正確な引用ではないが、おおよそは「第3期はインフラが整いすぎており問題だ」という内容だったと記憶している。つまり、ウェブラジオが複数立ち上げられたことにより、3期生は必要以上に周囲の声を気にしてしまい、自発的な創作行為が妨げられるという趣旨であろう。平たく言えば、余計なことはするなと釘を刺されたのだ。
これには、GGRも火がついた。
1年間休むことなくウェブラジオを継続できたのは、むしろこのアマサワの発言があったからかもしれない。
ゴッドガンレディオとダールグレンラジオの戦いは続いた。
もっとも、それが勝負と呼べるほどのものであったかは分からない。
実際に私たちがやったことといえば、黙々とウェブラジオをアップし続けるだけである。梗概バトルで敗れた自主提出作品を読み――ときに、ひと月に13もの短編を読まなくてはならないはめにもなったが――無責任にわーわー論じるだけのことであった。
いくら苦労を重ねても、あまり3期受講生からは相手にされず、再生数は伸びなかった。これは、私たちの問題によるところが大きい。的確なアドバイスを与えるダールグレンラジオに比べ、私たちの議論はまったく参考になるところは無かった。
例えば、ある回で「火星の原節子」という自主提出作品を論じたときのことである。
GGRメンバーの架旗は、女優の原節子のことを知らなかった。そのため「原節子」というものが、謎の素粒子であると読解したのである。彼はずっと「このゲンセツシという物体が~」と、得意げに自らの見解を述べ続けていた。
架旗の自信ありげな様子を見るうち、鵜川も高丘も「原節子」があの女優を指しているわけではないと説き伏せられたような気分になってしまった。最終的にGGRとしては、原節子は素粒子であるという見解に至った。
のちに、この壮大なる誤読を作者本人から指摘されたことは言うまでもない。
このように、ときに愉快すぎることもあるゴッドガンレディオであったが、熱心に聴いてくれる3期メンバーも存在していた。
そのうちのひとりが、伊藤元晴である。
彼は先の「火星の原節子」の作者である。伊藤はゲンロン批評再生塾の受講経験もあり、鋭い切り口の小説を書く。だが時として、それがあまりに尖りすぎているがゆえに、余人では理解しがたい内容となることもあった。GGRとしては、奇怪奇抜な小説の書き手である彼に、深く共感を抱いていた。
もうひとりが、甘木零である。
甘木は2期の同期であり、3期も継続受講していた。彼女は2期でこそ梗概選出される機会がなかったが、粘り強く自主提出を続けて筆力を高め、3期では複数回選出されるほどに実力を高めていた。不屈の闘志を持つ甘木のことも、私たちは敬意をこめて全力で応援していた。
私たちは、伊藤と甘木のことを「名誉GGRメンバー」と呼び、サイファイアに対抗しうる書き手であると推していたのである。
5 予想外の結末
ときは流れ、SF創作講座3期の「ゲンロンSF新人賞」発表の日となった。GGRとサイファイアにとっての決着の日でもある。
最終候補に残った7作の多くが、サイファイアへの加入が決定しているメンバーによるもので占められていた。しかし、私たちが全力で推していた名誉GGRメンバーである伊藤と甘木の両名も、最終候補に名を連ねていた。
いわば、これは代理戦争とも言うべき状態であった。どちらの代表者が最優秀を獲得するかにより、GGRとサイファイアの勝敗が決定することになるのだ。
再び、結果から述べよう。
3期のゲンロンSF新人賞は、琴柱遥「父たちの荒野」に決まった。
琴柱は、名誉GGRメンバーではなく、おそらくサイファイアへの加入が決まっていたわけでもない。つまりは、どちらの陣営も勝ったとはいえない結果となったのだ。
私としては、少し拍子抜けした気持ちになった。
受賞作は、圧倒的な高評価を受けての結果であり、もちろん祝福すべきものであることは間違いない。ただ、ウェブラジオを通じた戦いは決着が持ち越されたまま終わってしまい、私たちはなんだか毒気が抜かれたような気になってしまったのだ。
背後で、何が起こっていたのかも知らずに。
それからしばらく経って。
私たちGGRにとっては、耳を疑うようなニュースが二つも飛び込んできたのである。
まずひとつ。
名誉GGRメンバーである伊藤が、ダールグレンラジオの次期パーソナリティーに決定したというのである。このことは、彼がサイファイア閥の幹部として迎え入れられたことを意味していた。
そして、もうひとつ。
私たちの同期でもあり名誉GGRメンバーでもある甘木の短編小説が、同人誌『Sci-Fire』に掲載されることになったのである。私たちが四人目のGGRメンバーと呼んでいた甘木が、なんとサイファイア陣営に取り込まれてしまったのだ。
このことは二人のキャリアにとって喜ばしい出来事であると、私も頭では理解できる。しかしながら、GGRとしては両翼がもがれたような気分であった。私たちの戦いは、知らぬうちに勝敗が決していたのである。
ゴッドガンレディオの終了を祝うはずの打ち上げは、通夜のような様相となった。
鵜川は、ウイスキーのロックを呷りながら呻いた。
「もう、誰を信じていいか分からねえよ」
架旗は、刺身のツマとして盛られていた大根の千切りをやけ食いしながら、
「最初から、おれたち野良犬がサイファイア様に立ち向かおうなど、無理があったんだ」と、壊れたようにケタケタ笑った。
そして、私といえば――諦めが悪かった。
私は、鵜川と架旗の額にマジックペンで「3D2Y」と書き、それから「3D」をバツで消した。
6 そして2年後
私は、ウェブラジオを通じたサイファイアとの戦いで敗れても、真の敗者となったわけではないと考えていた。打ち上げの席で、二人の額に書いた暗号の意味はこうである。
「いまは、サイファイアに勝つことができない。2年間それぞれの場所で力をつけて、またここに集まろう」
誰かの手を借りて、彼らと戦おうとしたのが間違いだったのであろう。サイファイアに立ち向かうためには、自らの力を持って挑むべきだった。
私たちは、頂上決戦で敗北した麦わらの海賊団のごとく、それぞれの場所で高みを目指そうと誓ったのである。
そして2年後の、2020年。
私は、日本ファンタジーノベル大賞の受賞作家となった。
鵜川は、星新一賞で優秀賞を獲得した。
架旗は、会社で対立していた上司を、海外本社に直訴して首にした。
私たちは、もはや2年前のGGRとは違う。私たちが鍛えた筆力(一部のメンバーは別の力)は、サイファイアを倒すまでに至っていた。SF創作講座界隈では、GGRとサイファイアとの勢力図は完全に覆ったと噂されている。
だが、私は油断していない。
サイファイアには、黒幕が存在している。そう、第1回ゲンロンSF新人賞を獲得した高木刑のことである。このところ姿を晦ましていた彼であるが、活動を再開したのではないかという報が寄せられている。おそらくGGRとの決戦に備えるためであろう。
ゲンロンSF創作講座が続く限り、GGRとサイファイアの戦いもまた終わることは無い。それがいくら厳しかろうが、私たちは決して戦うことをやめない。
小説を、全ての支配から開放するために。
※ ウェブラジオの「ゴッドガンレディオ」は、SF創作講座第3期受講生を応援するという役目を終えたため、現在は公開終了しております。
追記 最後にお願いです
このエッセイでいただいた原稿料は、株式会社ゲンロン「コロナ危機突破の応援」に全額カンパさせていただきました。というのも、もちろんスケールは異なりますが、ゲンロンが置かれている状況が決して他人事に思えないからです。
私は3月25日にデビュー作を出版したばかりで、この売れ行きいかんによって今後の作家人生が決まるといっても過言ではありません。ですが、コロナ危機の影響によって、受賞パーティーが中止になり、書店さんへ挨拶にうかがうことも出来なくなりました。
激痛ですが、私もこのコロナ危機を突破したいと考えております。
というわけで、恥ずかしげもなくストレートに書きます。
拙著『約束の果て 黒と紫の国』(新潮社刊、1740円) をお買い求めいただけますよう、なにとぞ、なにとぞ、よろしくお願いします!!
高丘哲次
北海道函館市生まれ。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。同大学院博士前期課程比較文化研究科修了。「ゲンロン大森望SF創作講座」第2期を受講。第2回ゲンロンSF新人賞の最終候補となり、「人の世の終わり」で山田正紀賞を受賞。日本ファンタジーノベル大賞2019で大賞を受賞し、2020年3月に受賞作の『約束の果て―黒と紫の国―』(新潮社)でデビュー。