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【 #ゲンロン友の声】多様な社会が弱者に厳しいのは何故ですか?

<ゲンロンカフェ来場者・視聴者の声>
 多様な社会が弱者に厳しいのは何故ですか? 以前、東さんはグローバルで多様な社会は弱者に厳しいとおっしゃっておられたと思います。逆にローカルで多様性の乏しい社会は弱者に優しいとも。確かに多様性の高い社会で生きている人々は高い能力を備えているイメージが有ります(またリベラルな人が多い)。また、沖縄は弱者に対して優しいですが、とんでもなく同調圧力が強いとも聞きます。なんとなくは分かる感じなのですが、明確には理解できませんでした。その辺の所を説明いただけたら幸いです。(東京都, 30代, 友の会会員)

 少し誤解があるかもしれません。ぼくが主張したのは、「多様性を強調する人々の多様な社会のイメージ」は、ときに彼らに見えない弱者を切り捨てている、それゆえ実際には多様ではないように見えるということです。たとえば、「有識者」はしばしば、小さな商店が集まる駅前商店街が残る風景には多様性があり、郊外のショッピングモールには多様性がないといいます。たしかにショッピングモールの光景に多様性はありません。全国どこでも(否、世界中どこでも)同じです。実際ぼくも、「観光客」としては駅前商店街のほうが好きです。しかし、障害者や高齢者、乳幼児を抱える世帯から見れば、駅前商店街ほど使いにくいものはありません。そのようなひとたちはショッピングモールに行くでしょうし、だからこそ駅前商店街は衰退しているのです。だとすれば、視点を変えれば、郊外のショッピングモールのほうが多様な人々が集まる空間とも言えるはずです。つまりは、「多様性」をはかる基準そのものもまた、多様に複数化しなければならないのです。(東浩紀)
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1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。著書に『存在論的、郵便的』(新潮社、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)、『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社、第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』(講談社)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(河出書房新社)、『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ)、『忘却にあらがう』(朝日新聞出版)ほか多数。

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