【 #ゲンロン友の声】宮﨑駿氏に激怒された川上量生氏について

 先日、NHKでスタジオジブリの宮崎駿氏を特集したドキュメンタリー番組が放送され、そこで宮崎駿氏がドワンゴ会長の川上量生氏を批判したことが話題になりました。宮崎駿氏は、川上量生氏に対し想像力(具体的には身体障害を持っておられる方への思慮)の欠如を批判します。以前、東さんは文系の役割は想像力を提供することだと仰っていました(間違っていたらすみません)。そして、IT起業家の文系蔑視は凄まじいものがあると仰っておられました(実際、川上さんはN高設立に当たって「引きこもりの子は国語や古文を勉強するよりプログラミングを学んだ方がいい」と言っていました)。そういった意味では、IT起業家はある種の想像力(文系的な想像力)を「そんなものはいらんよ」と意識的に拒絶している人たちと言えるのではないかと思います。私には、この文系的な想像力と宮崎駿氏の言う想像力が同種のものであるように思えました。また、そうであれば宮崎駿氏のように想像力を大切にする人たちとIT起業家(文系的な想像力を拒絶する人たち)の衝突は避けられないように思えます。東さんのお考えをお聞かせいただけると幸いです。(岡山県, 20代男性, 友の会会員)

 むずかしいですね。まず当該のドキュメンタリー映像については、ぼくは一部しか見ていません。そのうえで言えば、たしかにあの場面、常識的には厳しい叱責のように思われるかもしれませんが、クリエイターがクリエイターを批判するときはあんなものであり、そのかぎりで宮崎駿的価値観とIT的価値観の衝突までとは思いませんでした。そもそもあのCGの動きが生命蔑視なのであれば、Boston Dynamicsのロボット開発とか(人間そっくりのロボットが蹴られて倒れるところが話題になりました)絶対だめだろうと思います。しかし宮崎氏がそこまで否定するのかはわかりません。だから僕はどちらかといえば、あれは川上さんのプレゼンのやり方への批判なのではないかと感じました。そのうえで当該番組を離れていえば、ぼく個人としてはたしかに、理系やIT系の友人と話すとき根深い文系的思考法や文系的知識への蔑視を感じることがあります。「金もってるだけで威張るんじゃねえよ!」と叫びたくなることもあります。しかし、まあ、すべての人間関係はそんなもんであり、いちおうはぼくは彼らと直接に話したりはしているわけで、以上の衝突も出会いがあってのことです。むしろ、IT系の経営者やエンジニアとまったく触れあったこともないまま、幻想だけをもとに「文系的想像力を欠くあいつらは危険だ!」とか叫んでいるいわゆる文系の方々こそ、根本的に想像力を欠いているのではないかと思います。なお、以上の話とはまったく無関係に、川上量生氏が書いたと想定される例のはてな匿名ダイアリー、あそこで最後に指摘されていた「太っている人間はなに言っても批判される」問題については完全に川上さんと同意です。そう、太っている人間は太っているというだけで差別される。そして炎上する。たいへん深刻な問題です。ただそこで、川上さんは糖質制限なるものでダイエットを進める方向を決意したようですが、そんなものは論理的に考えて挫折するに決まっているので、むしろ川上さんには、ぼくとともに連帯し、太っている人間への差別を世界から全廃する運動を立ち上げるべく、大胆な決意を示してほしいと思います。そのときこそ、本当の意味での文理融合が達成されることでしょう。(東浩紀)
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1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。著書に『存在論的、郵便的』(新潮社、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)、『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社、第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』(講談社)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(河出書房新社)、『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ)ほか多数。

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