さて、恒例のアンケート紹介企画です。今回は『ゲンロンβ36』です。恒例のとかいっても、本当は先月から始めたばかりなんですけどね。アンケート紹介企画とはなにか、そもそも『ゲンロンβ』とはなにかと思うひとは、とりあえず先月の記事をお読みください。リンクはこちら(https://genron-voices.tumblr.com/post/184249152609/)です。『ゲンロンβ36』の目次はここから読めます。
そしてこの記事が投稿された日(5月30日)の午後には、ちょうど『ゲンロンβ37』が配信・刊行されているはずです。『ゲンロンβ』の購読には、ぼくたちとしては友の会に入会してくれるのがいちばんありがたいですが、どうしても友の会には入りたくない、東の味方だと思われたくないんだ!というむずかしい事情をお抱えのかたは、AmazonのKindleなどでも個別に購入できます。この記事がおもしろかったら、ぜひ36だけでなく37のほうも買ってくださいね〜。
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ではさっそく行きましょう。
まずは今号からの新連載、本田晃子さんの「亡霊建築論」について。これはかなりの反響があって、いくつもアツい感想が届きました。2つ紹介します。
「「建てられた」建築の背後には、無数の「建てられなかった」建築が存在する。」もうこの書き出し一発で(あ、この人文章上手い。)と確信しました。そして僕のその確信は見事的中し、最後までとても面白く、いろんな人に話したくなるように上手く纏められた文章だと思いました。キャッチーなキーワードが並べられてるからでしょうか。「アンビルド建築」「労働宮殿」「ヴェスニン兄弟」「構成主義」・・・。おぉっと、全然内容に触れていませんねw
上記のキーワードから語られるロシアの理想主義的な突っ走りが面白かったです。よく訪日外国人が日本の文化に触れて「どうしてこうなったw」と感じるように、発想の出どころが全く推測できないものへの興味関心を掻き立てられました。
つぎに今回は飴屋さんの弓指寛治展評も大人気でした。
成果展に関しても、同様にそこに置かれている物や仕掛けを「読む」事が基本なんだなと思いました。そして「読む」にはまず文法を理解する必要があって、その文法はやはりテキストというかたちがとても適してると。
つぎに、今回もアンケート人気ナンバーワン(そう、じつはひそかに毎回順位が出ているのです……)の大山顕さん。
続いて、「つながりロシア」担当の高橋沙奈美さんに寄せられた感想。
そして最後に、「今後取り上げてほしい内容」として寄せていただいた声。
「新記号論」は読者のリテラシーを上げてくれる、というか目を開かせてくれるものでした。そして何より「自分は勉強をさぼっていたのだな」と深く思わされました(これ本当に大きい衝撃でした)。東さんはよくハッカー文化の話をされますが、DIY的である為にも、是非今後も読者・視聴者へのそのような啓蒙をお願いします。
『ゲンロン』第1期は、ちょっと文系というか批評の伝統継承という目次に振りすぎてしまったところがあって、最近は情報社会系やネットカルチャー系の議論が手薄になっているんですよね。けれども、むろんぼく自身としては、そこも自分のホームというか、アイデンティティのひとつだと考えています。『ゲンロン10』からはそこらへんを少しずつ復活させていくつもりですので、ご期待ください。
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それでは、今回の紹介はここらへんで。むろん、ほかにもたくさん感想をいただいていて、それらもすべて目を通しています。『ゲンロンβ36』には、ほかも星野さん、吉上さん、吉田くん……と注目原稿があって、そちらへの感想もみな紹介してお答えしたいのですが、それをやっているとほかの仕事ができなくなるので、なにとぞご容赦を。アンケートについては、編集部内で読むだけでなく、ときおり担当者から著者さんへも転送しています。著者さんへの励ましの言葉もいただければ!
そうそう、前回このアンケート紹介欄で「すべての原稿についてアツく感想を寄せてくれるひとがいたので全文紹介します」と書いたら、なんと今月は3人もの方々がすべての原稿についてアツく感想を寄せてくれました!(笑) それぞれたいへんなボリュームで、とてもここでは紹介できなくなってしまったのですが、ぼく以下編集部一同、ありがたく読ませていただいています。本当にありがとうございました。
このアンケート、ゲンロンにとってとても大事なものです。これからもどしどし感想をお寄せください! そして『ゲンロンβ』次号もよろしくお願いいたします!
ではまた来月〜。
1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。