ゲンロンサマリーズ(12)『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック』要約&レビュー|tokada
初出:2012年7月13日刊行『ゲンロンサマリーズ #16』
ドミニク・チェン『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック──クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』、フィルムアート社、2012年
要約
レビュー
本書は、国際 NPO「クリエイティブ・コモンズ」の日本支部立ち上げに携わったドミニク・チェンが、フリーカルチャーの起源と方法を整理し、その社会的意義を考察すべく記した著作である。
特にCCライセンスを使って自分の創作物の二次的利用(頒布や二次創作など)を奨励したいと考えているクリエイターには、最適の一冊だろう。ケーススタディ集には豊富な事例も取り上げられており、「動画のオープンソース化」「科学のオープンソース化」「書籍のオープンソース化」とカテゴリ別に整理されているだけでなく、それぞれの事例が各種の文化をいかにオープンソース化し得たのかが、具体的な手順をもって示されている。「ガイドブック」と掲げられたタイトルのとおり、あくまでも実用的な本であろうとする著者の配慮は、本書の隅々から感じとることができる。
しかしそればかりではない。本書は、「なぜフリーカルチャーなのか?」という疑問をもつ一般読者や権利者にこそ読まれるべき思想書でもある。行間に窺われる著者の深い教養と高度な技術リテラシーは、フリーカルチャーの意義を語る議論の説得力を十分に高めるのみならず、〈創造性とは他者の創造を模倣し改変すること、すなわち学習である〉という著者独自の思想へとまっすぐ繫がっている。インターネット社会の隆盛によって開かれた文化が次々と実装され、著作権の既得権益が揺らいでいる現代において、本書は「文化の指針書」としての役割を果たしてくれるはずだ。
『ゲンロンサマリーズ』は2012年5月から2013年6月にかけて配信された、新刊人文書の要約&レビューマガジンです。ゲンロンショップにて、いくつかの号をまとめて収録したePub版も販売していますので、どうぞお買い求めください。
・『ゲンロンサマリーズ』ePub版2012年7月号
・『ゲンロンサマリーズ』Vol.1〜Vol.108全号セット
・『ゲンロンサマリーズ』ePub版2012年7月号
・『ゲンロンサマリーズ』Vol.1〜Vol.108全号セット
tokada
1980年生まれ。IT系企業勤務のエンジニア。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。学生時代に国際大学GLOCOMの東浩紀研究室が運営するised@glocomの編集業務に携わって以来、東浩紀のゼロアカ道場や思想地図などの、東浩紀界隈のウォッチャーとして活動するようになる。週末思想研究会(通称「週末研」)メンバー。
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